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認知症予防のための
食生活:精神栄養学の
観点より

インタビュー

国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 疾病研究第三部部長 功力浩


認知症をはじめとする精神疾患に対して、これまで栄養学に基づいた科学的研究はほとんど行われてきませんでした。しかし21世紀に入り、認知症と食生活のかかわりについて、着実に研究が進んでいます。そうしたなか、精神疾患と食生活の関連性にいち早く着目し、「精神栄養学」の研究を続ける功力浩先生により、認知症と食生活の関係、また食生活による認知症予防の考え方について、お話をうかがいました。(2015.2.23 インタビュー)

少しずつ明らかになる、認知症と食生活の関係。

私は認知症やうつ病をはじめとする精神疾患の治療や予防において、食事療法や食品成分を活用した栄養学的アプローチのポテンシャルは高いと思います。食生活の改善がすぐに効果を発揮することはありませんが、長い目で見ると着実な改善を実感することが度々あるのです。認知症と食事との関係については、21世紀に入ってから欧米を中心に数多くの研究結果が報告され、次のようなことがわかってきました。
まず、エネルギーの摂取量が認知症の発症に影響すること。つぎに、魚に含まれている脂肪酸やビタミンの不足やミネラルの摂取バランスが認知症に関与すること。さらに、野菜や魚などを豊富に用いた伝統的な「地中海式食事」などが認知症予防に働くということです。しかし、国によって食文化は大きく異なりますので、日本国内での研究が必要であると考え、「精神栄養学」という分野に取り組むようになりました。

私は認知症の発症や進行の観点から、現代の食生活には大きく三つの問題があると考えています。一つ目が「エネルギーの過剰摂取」。エネルギーの過剰摂取は肥満やメタボリック症候群、糖尿病などと同様に、認知症の発症を高める可能性が示唆されています。二つ目は「精製・加工された食品の増加」。精白米のほか、カット野菜や切り身の魚などある種の加工済み食品では、食材の“味の良い”部分だけを使おうとする過程で、美味しくない部分に含まれるビタミンやミネラル、ポリフェノールなどが失われ、栄養バランスが損なわれてしまいます。そして、三つ目が「食事スタイルの変化」。伝統的な食生活が失われ、西洋化されるにつれて、加工済み食品が増え、ファストフードなど高カロリーな食品を食べる機会も増えたことが考えられます。このような食生活の変化が認知症のリスクと関係することがわかってきたことから、いまや認知症も生活習慣病のひとつととらえる考え方が広がっているのです。

認知症の予防のひとつ、生活習慣の改善

認知症は原因や症状の違いにより分類されますが、中でも主なものとして「脳血管性認知症」「アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)」「レビー小体型認知症」の三つが挙げられます。脳血管性認知症は脳の血管が硬くなり、脳梗塞や脳出血などにより起こる認知症であり、一方でアルツハイマー病はさまざまな要因が複雑に関与して、脳の広い範囲で変性が起こることが原因とされます。そして、レビー小体型認知症は脳細胞の中にレビー小体という物質がたまることによって起こります。
なかでも発症頻度が高い脳血管性認知症とアルツハイマー病は、生活習慣の見直しが予防につながることを示す研究成果が蓄積されており、その中でも有力と言われているのが「運動」です。現代生活は運動不足になりがちですが、それを補う有酸素運動を行うことにより脳の細胞が活性化します。少し汗ばむ程度のウォーキングを週3、4回行うなどの習慣をつけるとよいといわれています。また知的活動や社会活動に積極的に参加することや食生活の改善も予防的に働くと考えられています。
脳血管性認知症の発症には、高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリック症候群や心臓疾患などがリスク要因となるため、これらを予防するカロリーを控えた食生活が、脳血管性認知症の予防にも直結します。またアルツハイマー病もエネルギー摂取量が過剰であると発症リスクが高まり、中年期の糖尿病はアルツハイマー病の発症率を約2倍に上昇させることがわかってきました。近年、アルツハイマー病は「第3の糖尿病※」とも呼ばれるようになり、その予防において食生活の改善が重要視されるようになってきています。


1型糖尿病:体内で血糖を下げるインスリンが分泌できない状態
2型糖尿病:食事など生活習慣が関連してインスリンの作用が不足する状態
アルツハイマー病(第3の糖尿病):脳でインスリンの作用が不足している状態

アルツハイマー病予防に効果のある、
地中海式食事と和食プラス乳製品。

脳血管性認知症予防のみならず、アルツハイマー病予防の観点からも近年注目を集めているのが伝統的な食生活です。
その中でも欧米でよく研究されているのが、豊富な野菜や魚などに、オリーブ油と適量の赤ワインを組み合わせた「地中海式食事」。脂質のバランスがよく、ビタミンやミネラルをとりやすい地中海式食事を実践している人は、アルツハイマー病の発症率が(観察スタート時点を1.0とした場合)12年後にはおよそ0.6倍に低下し、また、すでにアルツハイマー病を発症した人の死亡率を低下させると報告されています。さらに地中海式食事の摂取に加えて、運動量が高い人では、発症率がさらに低くなることがわかりました。これらの研究はいずれも欧米人を対象としたものですが、日本人を対象とした研究では大豆、野菜、魚などを組み合わせた伝統的な和食に乳製品を加えた食生活が、認知症予防に役立つ可能性が示唆されています。出汁をうまく使い、塩分は控えめにするとさらに良いでしょう。
欧米での研究では魚の摂取量が多いと、認知症全体とアルツハイマー病の発症率が低下することが報告されています。魚には血管をやわらかくする脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が多く含まれているためです。これが、地中海式食事や和食が予防効果を示した理由のひとつだと考えられます。

赤ワインやお茶、カレーのスパイスのほか、
近年では、中鎖脂肪酸に注目が!

現在、食品による認知症予防の研究が着々と進んでいます。それらの成果を簡単にまとめたものが、下の10か条です。「四」のビタミンEは抗酸化作用を有し、食事で摂取した場合には他の栄養素との相互作用も含め予防効果が期待できますが、単一成分のサプリメントの場合には、有効性は乏しいとされています。「五」に含まれる赤ワイン、お茶、カレーのスパイスは、いずれも強い抗酸化作用を持っています。それに加えて、赤ワインのレスベラトロールは脳の細胞を保護する作用、お茶のカテキンは炎症による傷害から細胞を守る作用、カレーのスパイスに含まれるクルクミンは、アルツハイマー病の原因と考えられている老人斑(※)の産生を抑制することなどが報告されており、いずれもアルツハイマー病予防に働くことが期待できます。
そして、「六」の鉄は、不足するのは良くありませんが、それを防ぐために鉄のサプリメントを漫然と摂取し、過剰になると、アルツハイマー病の発症率が高まることが指摘されているので、注意が必要です。そして、これらのほかに近年注目されているのが、ココナッツオイルなどに含まれる「中鎖脂肪酸」です。アルツハイマー病になると、脳はエネルギー源のブドウ糖をうまく使えなくなり、エネルギー不足になることがわかってきました。これに対して中鎖脂肪酸は、ブドウ糖の代替エネルギー源となるケトン体を効率的に産生することでエネルギー不足の状態を解消すると考えられ、それにより認知機能が向上することが示唆されています。これまで発見されてきた食品とは異なる、ユニークな機能を有する成分として、今後の研究の進展に期待が集まっています。

※老人斑:アミロイドβという変性したたんぱく質が脳内で異常に凝集し沈着したもの

できることから実践していくことが大切。

認知症の中でも発症頻度が高い脳血管性認知症とアルツハイマー病のリスクは、エネルギーの過剰摂取により高まることがわかったため、認知症予防において食生活が重要視されるようになりました。そして、研究が進んでいく中で、伝統的な食事スタイルである地中海式食事や和食、その共通点となる魚の摂取が認知症予防に役立つ可能性があることがわかってきました。さらに近年、アルツハイマー病対策に有効な食品成分として、赤ワインのレスベラトロールやお茶のカテキン、カレーのスパイスのクルクミン、ココナッツオイルなどに含まれる中鎖脂肪酸などが注目を集めています。しかし、前述の10か条の「十」にあるように、知っているだけでは認知症を予防できません。まずはできることから生活の中に取り入れ、実践していくことが大切です。

功刀浩 先生 (くぬぎ・ひろし)

国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第三部部長

1986年東京大学医学部卒業。ロンドン大学精神医学研究所遺伝学部門留学、帝京大学医学部精神神経科学教室講師を経て、現職。早稲田大学、山梨大学客員教授。東京医科歯科大学連携教授。精神科治療の中でもうつ病と食事との関連性にいち早く着目し、精神栄養学の研究を続ける。著書に「精神疾患の脳科学講義」(金剛出版)、「図解 やさしくわかる統合失調症」(ナツメ社)『今ある「うつ」が消えていく食事』(監修、マキノ出版)ほか。

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